どうも、奨学金1500万プレイヤー阪大生のPEN(@PENwitmi)です。
薬剤師国家試験やCBTの、薬理学の勉強方法に悩んで検索した結果、このブログにたどり着く人が結構いるようです。
以前より、私は薬剤師国家試験を乗り越えるには「関連付け」と、「メモ帳勉強」が重要だと書いてきました。
(関連記事:「私の薬理学の勉強法。コツは繋げまくること(PDE阻害薬を例に)」「【隙間時間メモ帳勉強法】国試に受かるには、電車の勉強から改める」)
今回は、実際に血小板をテーマに関連付け勉強について紹介してみたいと思います。
一問一答形式の暗記はもうやめて、関連付けとメモ帳勉強を始めてみてください。
分かりやすいように図も添付していますが、できれば自分でも頭を整理しながらノートに書いてみてください。
ノートにまとめたことは、細分化してメモ帳勉強に落とし込みましょう。
前提知識:血小板血栓について(生物)
一次血栓の形成とcAMP
まず大前提として、血小板に関係する薬を覚える前に、血小板の仕組みについて確認しておきましょう。
後でわかりやすく図を置いているので安心してください。
血小板は巨核球の細胞質がちぎれてできる血球成分で、血液中に15~40万/μL程度含まれています。
血管に傷が入ってコラーゲンと血小板が粘着すると、血小板からADP、5HT(セロトニン)、TXA2が放出され、周りの血小板凝集を更に促進します。
ここで覚えておきたいのは、ADP、5HT、TXA2が血小板凝集を促進するということだけでなく、どういう機序でそれが起こるのか。
めちゃくちゃざっくりと言ってしまうと、
ということになります。
ここをしっかりと掘り下げて勉強すると、他の単元のことも一気につながってくるのです。
今回の主人公は、Gタンパク共役型受容体です。
cAMPやCaが登場する話には、必ずと言っていいほどGタンパクが関係してきます。
Gタンパク共役型受容体
今回はしっかりとGs、Gi、GqのどのGタンパクも登場します。
先ほど言ったADP、5HT、TXA2の受容体がどのGタンパクと共役しているのかを、まずはしっかりと覚えてください。
ADP受容体はGiタンパク、5HT2受容体とTXA2受容体はGqタンパク共役型です。
さて、それぞれのGタンパクがどのような役割を持っているか、説明できますか?
怪しい人は、これを機にしっかりと復習しておきましょう。
GsタンパクとGiタンパクは、AC(アデニル酸シクラーゼ)の調節を通じてcAMPの濃度を変化させます。
後で登場するGsタンパク共役型の受容体を含めて図示すると、このようになります。
この図は、何も見なくても書けるくらい、しっかり覚えておきたいところです。
図を理解したうえで、復習のためには一問一答形式のメモ帳を作っていきます。
(参考:「【隙間時間メモ帳勉強法】国試に受かるには、電車の勉強から改める」)
実際には、例えばこのような問題になります。
もちろん、自分が大切で復習しておきたいと思ったことはどんどん問題にしてください。
抗血小板薬の役割(病態・薬物治療)
「血をサラサラにする薬」で絶対に終わらせてはいけない
抗血小板薬・抗凝固薬を、ざっくりと「血栓を作らせない薬」とか、「血をサラサラにする薬」と覚えている人が結構多いです。
しかし、実際には明確な使い分けが存在します。
CBTではまだしも、国家試験ではそういった細かい知識を狙い撃ちしてきます。
どんなときに抗血小板薬を使って、どんなときに抗凝固薬を使うのか、しっかり区別して理解しておきましょう。
主に動脈血栓に使うのが、抗血小板薬
抗血小板薬の得意分野は、動脈です。
もちろん動脈自体は全身のいろんなところにありますが、特に覚えておきたいのが、心臓・脳・下肢ですね。
それぞれ、動脈硬化(アテローム)が原因で起こる疾患があります。
心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(ASO)の3つは確実に押さえておきましょう。
ちなみに、ややこしいですが、心原性脳塞栓症は、心臓でできたフィブリン血栓が原因で起こるので、抗血小板薬を使いません。
ややこしいですが、脳血栓症(脳の動脈でできた血小板血栓)と脳塞栓症(心臓などでできたフィブリン血栓)は別物です。
なら、抗凝固薬は?
ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬は、静脈血栓(フィブリン血栓)が得意です。
先ほど登場した心原性脳塞栓症は、心臓でできたフィブリン血栓なので、抗凝固薬を使うことになります。
抗血小板薬の勉強をするのであれば、もちろん抗凝固薬についてもしっかりと復習しておきたいところです。
しかし、そこまで脱線すると本筋をぜんぜん説明できないので、この記事では割愛しておきます。
抗血小板薬の作用機序(薬理)
お待たせしました、やっと薬理に入ります。
毎回これくらいの前提知識をしっかりと入れてから薬理学に入ると、実は改めて覚えることはそれほど多くないということがわかります。
まずは図を上げておきますね。
こうして図として描くとたくさんあるように思えますが、分類してしまうとそれほど多くありません。
抗血小板薬は、大きく3つに分類しておくと覚えやすいです。
・TXA2合成を阻害するもの
・その他
この順に紹介していきます。
cAMPを上昇させるシリーズ
cAMPを上昇させる簡単な方法は、
・Gsタンパク受容体を刺激する
・cAMPを分解させない
が挙げられます。
まずはGiタンパク共役型受容体の遮断から。
この解説で登場したGiタンパク共役型受容体を覚えていますか?
ADP受容体ですね。忘れていた人は少し戻って確認しておきましょう。
ADP受容体の中の1つ、P2Y12受容体を不可逆的に遮断するのが、チクロピジンとクロピドグレルです。
またGsタンパク共役型の受容体としてここで登場するのが、PGI2受容体と、A2受容体(アデノシン受容体)です。
PGI2受容体を刺激するのがベラプロスト、アデノシンの量を増やしてくれるのがジピリダモールです。
どちらも、
と表せます。
また、cAMPの分解酵素はPDEⅢ(ホスホジエステラーゼⅢ)ですが、これを阻害してもcAMP濃度は高くなります。
PDEⅢ阻害薬は、シロスタゾールと、先ほども出てきたジピリダモールですね。
PDE阻害薬については、別の記事でも詳しく紹介しています。
TXA2合成を阻害するシリーズと、その他
この図で示した通り、Gqタンパクの調節で血小板凝集を抑制するのが残りの薬です。
その中でもTXA2の合成を阻害する薬が3つ、5-HT2受容体を遮断する薬が1つですね。
それぞれ作用点が少し異なりますが、どれも最終的にはGqタンパクが働かなくなり、Ca濃度が下がります。
EPAは、細胞膜上のリン脂質にあるアラキドン酸の量を相対的に減らす(EPAと置き換わる)ことで作用を発揮します。
オザグレルはTXA2合成酵素を阻害します。
アスピリンはCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害しますが、高濃度になるとPGI2の合成も阻害してしまう点に注意です。
PGI2はGsタンパク経由で血小板凝集を抑制してくれるので、減ってしまうのは都合が悪いですよね。
これをアスピリンジレンマといいます。
最後のサルポグレラートは、5-HT2受容体の遮断ですね。
サルポグレラートとベラプロストは、先ほども紹介したASO(閉塞性動脈硬化症)でよく出題されます。
関連付けて覚えることはまだまだある
生物、病態・薬物治療、薬理学と、様々な観点から血小板について見てきました。
これだけでおなか一杯という人も多いと思いますが、実はまだまだ関連付けて覚えておく必要があります。
・手術前の休薬期間(実務)
・イエローレター、ブルーレター(実務)
・代謝と排泄(薬剤)
・相互作用(実務)
これだけは最低限押さえておきたいのと同時に、更に次のことまで手を伸ばせたらかなりハイレベルですね。
・心筋梗塞の急性期治療・慢性期治療(循環器系の疾患)
・脳梗塞の急性期治療・慢性期治療(神経・筋の疾患)
・他の器官・組織でのPDE阻害薬の働き(薬理)
・一般名と商品名の確認(実習での知識とリンク)
なかなか終わりの見えない作業ですが、こうして深く勉強したことは出題されても自信をもって答えることができます。
また、一つ忘れてしまっても他のことから関連付けで答えを導き出すことも可能です。
ぜひしっかりと関連付け勉強をしてみてください。