どうも、奨学金1500万プレイヤー阪大生のPEN(@PENwitmi)です。
薬剤師国家試験が近付いてきて、勉強も本腰に入っています。
そんな私が今、どうやって薬理を勉強しているのかを書いてみます。
(この記事は休憩の代わりに書いているので心配ありません)
薬理の勉強のコツは、タイトルにも書きましたが、「繋げて繋げて繋げまくること」です。
これだけだと意味が分からないと思うので、順に解説していこうと思います。
今のところこの勉強方法で30時間くらい勉強したところ、必須の薬理の点数が足切りギリギリだったのから15点中13点まで上がっています。
追記:17日で48点、模試の点数を上げることに成功しました。
薬理の勉強のコツ
知識と知識を繋げる
薬理のポイントは、「知識を繋げて繋げて繋げまくること」です。
もう少しきちんと言うと、「①知識と知識の間の穴、隙間を埋めること」「②一つの知識から網目状に関連付けしていくこと」です。
薬理をただの暗記科目だと思っていると、膨大な量の暴力にやられてしまいます。
冷静に考えて、1000ページを超える青本を丸暗記するのは不可能です。
なので、ある程度の知識ごとにまとめて覚えていく必要があります。
ただの暗記事項の列挙で終わらせないのが、薬理の勉強のコツということです。
「なぜ?」を「当たり前だ」に
薬理の内容を覚えるときは、必ず生物と病態・薬物治療の青本も使います。
それは、一つ一つの「なぜ?」にきちんと答えていくためです。
これが①の穴埋めですね。
複数のことを、一つの内容として理解してしまいます。
ただの丸暗記ではなく、「なるほど、冷静に考えれば当たり前じゃないか」と自分が納得するまで調べつくします。
これだけではわかりにくいので、一つ例としてPDE阻害薬を挙げてみます。
例:PDE阻害薬
PDE阻害薬って何だ?
さて、薬理をある程度勉強している人なら、PDE阻害薬がどんな作用があるか答えられるでしょうか。
PDEはホスホジエステラーゼの略。
…まさかここで理解が終わってはいないですよね?
PDEは、端的に言うと、cAMPやcGMPを分解する酵素です。
cAMPとかが苦手だ、という人もいるかもしれませんが、グッとこらえてとりあえず次に行きましょう。
PDE阻害薬って何があったっけ?
PDE阻害薬は、
心臓に対する強心薬(アミノフィリン、ミノルリン、オルプリノン、ピモベンダン)
肺高血圧症治療薬(シルデナフィル、タダラフィル)
抗血小板薬(シロスタゾール)
なんかがあります。
…まだです、まだ終わっちゃダメですよ?
ここで終わっては、ただの丸暗記です。
cAMPやcGMPを分解するPDEを阻害すると何が起こるんでしょうか?
もともと、cAMPやcGMPは何をしていたのでしょうか?
そう、生物の内容に移っていきます。
PDEⅢ阻害薬
心臓のcAMPの働き
心臓に対してPDE阻害薬を使うときは、特にPDEⅢを阻害する目的で使います。
PDEⅢは、cAMPの分解酵素です。
つまり、PDEⅢ阻害薬を使って、cAMPの濃度を上げることが目的です。
心筋でcAMPの濃度が上がると、Caの濃度が上がってトロポニンCと結合し、心筋の収縮力が上がります。
こんなことをやってるのが、アミノフィリン、オルプリノン、ピモベンダンですね。
ちなみに心筋では細胞内のCa貯蔵が少ないので、基本的にはチャネルを開けて外からもらってくることになります。
cAMPによってプロテインキナーゼAが活性化されて、Caチャネルを開けてくれるんですね。
(さらにちなみに、ピモベンダンにはトロポニンC感受性増大作用なんかもあります)
ところで、cAMPの濃度は、もともと何をすれば上がるか覚えていますか?
…Gタンパクですね。
Gsタンパクを活性化すると、アデニル酸シクラーゼが活性化されて、cAMPの濃度が上がるんでした。
心臓でPDE阻害薬を使うと何が起こるか、毎回連想する
結局、PDEⅢを阻害すれば、いろいろあって心筋の収縮力が上がることになりますね。
「いろいろあって」と書きましたが、PDE阻害薬が登場するたびに、きちんと「いろいろ」の内容を思い出すことが大切です。
毎回考えるとか面倒臭い、と思うかもしれませんが、実はそれが一番近道です。
なぜなら、ここから他の薬についても同時に復習できるからですね。
ちょっと、薬物治療の話に移っていきます。
PDEⅢを阻害する目的は、cAMPの濃度を上げることでした。
もともとヒトの心筋ではアデニル酸シクラーゼをどうやって活性化していたかというと、β1受容体の刺激です。
ということは、もちろん、β1刺激薬(ドブタミン、デノパミン)でも同じような効果が期待できますよね。
他には、アデニル酸シクラーゼを直接活性化してあげてもいいかもしれません。(コルホルシンダロパート)
まどろっこしいから、直接cAMPを増やしたらいいじゃないか、ともなりそうです。(ブクラデシン)
ちょっと寄り道(他のcAMP)
ところで、心筋以外の場所でcAMPが上昇すると、何が起こるんでしょう?
つまり、他の場所でGsを刺激すると、どうなるかということですね。
え?関係ない?
関係ないと言ってぶった切ってしまわないのが、この勉強法のミソです。
一つの知識に全部くっつけてしまう勢いで、関連付けしてしまいましょう。
これが②の関連付けですね。
今後、勉強していて、cAMPという文字を見たら、全部ノートの一か所にまとめておきましょう。
まずは平滑筋です。
平滑筋でcAMPの濃度が上がると、プロテインキナーゼAが活性化されて仕事をし始めます。
その内容は、「ミオシン軽鎖キナーゼ」のリン酸化(不活化)。
誰だお前、と思ったら、調べてくださいね。
「ミオシン軽鎖キナーゼ」=「Caと結合したカルモジュリンに唆されて、ミオシン軽鎖をリン酸化(活性化)、筋肉収縮させちゃうタンパク」のことです。
というわけで結局、平滑筋でcAMPが上昇すると、筋肉が弛緩します。
お気づきだと思いますが、心筋と逆ですね。
(cAMP↑⇒Ca↑⇒心筋収縮力↑)
cAMP濃度が上がると心筋は収縮しますが、平滑筋は弛緩します。
(交感神経が刺激されると、心拍数は上がりますが、腸管の運動は抑制されるんでしたね)
さて復習ですが、cAMPはどうやって上げるんでしたっけ?
…そう、Gsタンパクを介したアデニル酸シクラーゼの活性化でしたね。
これをやってのけるのが、β2刺激薬(サルブタモール)です。
何の話?気管支平滑筋の話です。
そういえば、喘息の薬にテオフィリンってありましたよね。
心臓で登場したアミノフィリン、実は本体はテオフィリンです。
ということは、テオフィリンもPDE阻害薬です。
といった具合ですね。
(ちなみにテオフィリンもアミノフィリンも、非選択的PDE阻害薬です。また心筋A1受容体遮断作用とかもあります)
血小板でのcAMP
他にも確認しておきたいcAMPと言えば、血小板ですね。
血小板でcAMP濃度が上がると…なんとCa濃度が下がります。
またしても、心筋と逆ですね。
血小板では、CaはADPや5-HTの放出を促進します。
そして、ADPや5-HTがあると、血小板は凝集してしまうんです。
つまり、
ということが起こります。
もうおわかりでしょうか、これがシロスタゾールですね。
ちなみに、血小板にあるGsタンパクの受容体と言えば、PGI2受容体があります。
なので、プロスタグランジン製剤(ベラプロスト)でも同じことが起こりますね。
PDEの復習をするつもりが
PDE阻害について考えると、cAMPについて考えていくことになります。
つまりそれは同時に、Gsタンパクについても復習することにもなります。
とまぁこうして考えている間に、割といろんなことが繋がってしまいます。
こうしておくと、Gsタンパクについてド忘れしてしまっても、どれか一つPDE阻害薬を覚えていれば、関連付けで導けるようになります。
PDEⅤ阻害薬
せっかくなので、PDEⅤの方も書いてしまうことにします。(自分にとっても復習になるので)
cGMPの働き
PDEⅤは主に、cGMPの分解を行う酵素です。
なので、PDEⅤ阻害薬を使うと、cGMPの濃度が上昇します。
cGMPはもともと、どこで何をしていたのでしょうか。
一番覚えておかないといけないのは、やはり血管の拡張でしょう。
血管平滑筋は、cGMPの濃度が上がると弛緩します。
面白いですよね、平滑筋のcAMPと同じ。
(PDEⅢ阻害⇒cAMP↑⇒ミオシン軽鎖キナーゼ不活化⇒平滑筋弛緩)
(細かく言うと、cGMPでプロテインキナーゼGが活性化され、ミオシン軽鎖ホスファターゼを活性化、ミオシン軽鎖を脱リン酸化させます。細胞内Ca濃度も下げてくれるとのこと)
可溶性グアニル酸シクラーゼとは
ところでcGMPは、グアニル酸シクラーゼによって合成されるんでしたよね。
血管平滑筋には、可溶性グアニル酸シクラーゼが存在します。
こいつは、NO(一酸化窒素)によって活性化されるんでしたね。(流石に脱線すぎるのでここでは詳しく書きません)
というわけで、PDEⅤを阻害するのは、NOを作用させるのと同じような働きがあるわけです。
これを狙ったのが、肺高血圧症治療薬のシルデナフィル。
肺の血管を弛緩させてやろう、というわけですね。
ちなみに保険適用外では、勃起不全薬のバイアグラとしても使われています。
こちら試験範囲外なのであんまり詳しく調べていませんが、勃起は血液の流入によって内圧が上昇して起こるので、同じように血管拡張作用だと思います。
ちなみに、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化したらいいじゃないかと思ったら、やっぱりそんな薬もありました。(リオシグアト)
膜結合型グアニル酸シクラーゼとは
さて、グアニル酸シクラーゼと言えば、忘れてはいけないのがこちら。
カルペリチド、と言ってピンと来た人は勉強している人ですね。
hANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)製剤です。
カルペリチドは、血管や腎臓のGC-A受容体を刺激し、膜結合型グアニル酸シクラーゼを活性化させます。
GC(グアニル酸シクラーゼ)-A(ANP)受容体、なんてダイレクトな名前ですよね。
どう見ても酵素内蔵型の受容体なので、当然グアニル酸シクラーゼも膜に刺さってます。
というわけで、hANPを使うとcGMP濃度が上がって血管平滑筋は弛緩します。
なんだPDEⅤと同じじゃないか。
当然血圧は下がります。
ちなみに腎臓では、輸入細動脈を拡張させることで利尿させるようです。
(更に調べたら、輸出細動脈を収縮(!?)させ、集合管で水とNaの排出を促進し、RAA系を抑制し、と大活躍のようです)
さてそんなカルペリチドですが、こちらも結局cGMP濃度を上げているわけです。
「PDEⅤ阻害薬と併用していいのか?」
そう思って調べてみたら、やっぱり慎重投与とのことでした。
作用機序からして当然ですね。
まとめ
今回はPDE阻害薬を幹ネタに、大量の枝葉をつけて考えてみました。
正直、めちゃくちゃ時間はかかりますが、定着具合は抜群にいいです。
何度も何度も目にする単語があったら、やってみる価値はあるんじゃないでしょうか。
私は他にも、ドーパミン(DA)なんかでも同じように繋げている途中です。
ぜひ参考にしてみてください。
勉強の成果は以下のリンクへ。